【背景】ICTによって地域との交流を深め、新しい学びを探求する

サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society 5.0」。多様なモノやサービスが、地域・年齢・性別・言語といった格差を超えてつながっていく、新時代のコンセプトです。しかし、有機的なつながりによって新たな価値を生み出すためには、他者と協働する力が必要不可欠。その力は、教育現場によって育まれることが期待されています。

そこで、埼玉県立総合教育センター様が官民連携で取り組みはじめたのが「次世代の学び創造プロジェクト（まなプロ）」です。

埼玉県下においては、就業などをきっかけとした転出超過を抑えることも、課題のひとつ。地域社会の仕組みや魅力、そこに生き生きと貢献する大人たちの価値観にふれる教育も、さらに必要性を増しています。

また、2020年のコロナ禍においても、学校教育は変化を余儀なくされました。そんななか「まなプロ」は、新しい生活様式に適応しながら、地域との協働による学びの機会を生んだのです。

埼玉県総合教育センター様とリコージャパンが連携した一つの実施例が、遠隔システムとコミュニケーションツール360度カメラを使った、公共施設や地場企業などの見学授業です。それは3密を避け、教室にいながらリアルな現場とふれあえる「新たな校外学習」でした。

【状況／効果】教室にいながら、「消防署のリモート見学」によって地域での仕事を理解

もともと熊谷市立石原小学校では毎年、近隣消防署への校外学習を実施していました。実際の施設・設備や車両、訓練などを見学しながら、消防署員より説明を聞くイベントです。緊急時への備えを調べることで、消防署で働く人々が地域の安全を守るためにしていることや、火災防止のために努めていることを理解するのが目的でした。

しかし、コロナ禍によって同じ形式での実施は不可能に。新たな学習内容を検討するにも、計画立案や旅行会社との手配・調整が難しいうえ、予算にも限りがあるため、ベストな訪問先が見つかりません。さらに、実際の訪問をするためには3密対策が必要となり、子どもたちに体験させてあげられることが減っていたと言います。

そこで「まなプロ」として検討されたのが、小学校の体育館にあるパソコンと熊谷市消防本部 中央消防署のタブレットを遠隔会議システムでつなぐ「リモート社会科見学」でした。360度カメラで撮影したはしご車や緊急出動の様子などを投影しながら、消防署員にリアルタイムで説明をしてもらいます。LIVE映像と事前に撮影していた映像を交互に入れ、児童に見せていきました。

リアルな映像と説明に、子どもたちは興味津々。96名のうち、映像や写真が「とても見やすかった」としたのは41人、オンライン消防署見学が「とても楽しかった」としたのは82人と、アンケートも好評でした。

「コロナのせいで中に入ることはできなかったけど、リモートでやってみたら本当にたのしかったです」「ふだんは見られないところも見られてとてもうれしかったです」「説明もえい像や写真は見やすかったし、わかりやすかったです。初めてのオンライン見学はとても楽しかったです」と、前向きな感想も集まっています。教科書だけではない本物とふれあう機会は、子どもたちに大きなインパクトを与え、郷土愛を深めるきっかけにもなったようです。

見学先への移動がないため、授業時間の確保や新型コロナウイルス感染拡大対策においても、大きなメリットがありました。教員たちが地域という他者と協働したり、ICTを活用したりする姿を見せることで、子どもの協働力や情報活用リテラシーを高めることも期待されています。

【今後の展望】これまでになかった機会を、機器の充実によって子どもたちに届けていく

今回の成功事例も踏まえ、今後は特別支援学校などにおいても同様の実証が進んでいきます。ICTを活用すれば、普段は実現が難しいことの仮想体験がどんどん可能となっていくでしょう。子どもたちがワクワクする体験を届けられるように、リコージャパンは各校様と連携して、教育現場への効果的なICT導入を進めてまいります。