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事例

2021.12.01

ICTで叶える「誰一人取り残さない」教育。離島にもたらされた異文化交流や専門的な指導

目次

【背景】離島の教育環境を少しずつ改善していくために、ICT導入による遠隔授業を実現。

離島には、教育活動の制約や専科教員の不在、研修機会の少なさといった、地域特有の教育課題があります。それを解決するために立ち上げられたのが「離島教育環境改善事業」です。その一環として、与那国町や伊江村では、先がけて遠隔授業などの実験を進めていました。
令和2年には、琉球大学教育学部附属中学校(以下、附属中)と伊江中学校(以下、伊江中)が連携して、遠隔授業を実施することが決定。それまで附属中ではレンタル機材を搬入して実験に参加していましたが、沖縄人材育成事業費補助金を活用して、新たな機器を整備する機会を得ました。
附属中とともにプロジェクトを進めた地域連携推進機構の背戸教授は、導入システムについてこう話します。

ICTによる遠隔授業をスムーズに行うためには、まず各校のICT環境が大切です。接続先である伊江中のシステムや具体的な授業での活用方法が決まっていなかったため、附属中では、ある程度フレキシブルな機器構成が必須でした。リコージャパンが、さまざまな要望を汲み取りつつ、コンセプトまで含めて相談に乗ってくれました

導入時に懸念となったのは、機器の挙動でした。カメラやモニターの配置から、複数台のマイクを使うときの注意事項、撮影時の画角など、実際の授業をやってみないとわからないことがたくさんあります。附属中では、本番に使う場所でリコージャパンからの丁寧なレクチャーを受けながら、教員が準備を進めていきました。

【状況/効果】離れた仲間とふれあい、さまざまな人の意見を聞くことが生徒たちの刺激となる

・英語と技術家庭では、離れた土地の生徒たちがZOOMで交流
遠隔授業は、英語・技術家庭・音楽の3科目で実施。英語は附属中と伊江中のほか、カリフォルニアに住む中学生3名とも接続し、三者でZOOM会議を行いました。お互いの学校や暮らしのことを紹介し、簡単な感想を述べ合ったあとは、質疑応答です。附属中の生徒たちからは「ネイティブの人との交流は普段できないことだから、とても新鮮で楽しかった」「ただの教科書ではなく、本当の外国の人と話すことで、より興味がわいた」などの感想が挙がりました。

技術家庭は、附属中と伊江中の生徒たちが作ったロボットを、お互いに紹介しました。伊江中はロボットコンテストに力を入れているため、県大会に出場した優秀なロボットが登場。ロボットの動きをダイナミックに見せられるよう、カメラワークにも工夫をしていました。通信的な見えづらさは多少あったものの、生徒たちはお互いのロボットに興味津々。とくに附属中の生徒は、レベルの高い伊江中のロボットに、大きな刺激を受けたようです。

比嘉校長は「同じ中学生であっても、感じ方や意見、日々の暮らしは違うもの。他校の生徒たちと交流することで、日常にはない発見ができたようでした。とくに経験の限られる離島の生徒たちにとっては、非常に身になる機会だと感じました」と、振り返ります。
同じクラスメイトとずっと過ごすことが多い離島では、さまざまな人とふれあい、さまざまな意見を聞くことだけでも、有意義な経験です。授業を終えたあとに、各校の生徒たちがオンラインで友人になる場面もみられました。

「これからは、一定時間ZOOMをつなぎっぱなしにしておいて、談話室のように自由に雑談できる環境を整えてみてもいいかもしれません。伊江島の小規模校で学んだ中学生たちは、進学のために島を出て、多くが沖縄本島の高校に入ることとなります。そこにはどうしても、大きな環境変化がある。沖縄本島の高校を経て、別の地域の大学に進む場合も同様です。子ども時代に身近に大学生がいないために、自身の未来にイメージがつかないこともありえます。でも、今回のようにICTを通じて離島外の雰囲気や学びを感じる機会が増えれば、その溝を埋められるはず。これからも大きな効果が期待されます」(地域連携推進機構・背戸教授)

・離島の音楽の授業をよりよくするため、遠隔で専科教員が指導
音楽の連携授業では、合唱の遠隔指導にトライしました。附属中の音楽教員が伊江中の授業にZOOMで参加。生徒たちの合唱に、具体的な指導をしていきました。英語や技術家庭のように生徒同士の交流はありませんでしたが、教員の研修の一環として、効果を発揮したそうです。
地域連携推進機構の柴田准教授は、離島の専科指導の課題や解決法について、こうまとめます。

離島の学校には専科教員がいないために、免許のない教員が実技科目を指導しなければいけないケースが少なくありません。また、近隣校の教員と交流したり、研修会などで情報交換したりしながら授業をつくっていくことは、免許外の教員だけでなく専科教員にとってもなかなか難しい環境です。だからこそ、今回はICTを活用して、附属中と離島の伊江中の教員が連携し、音楽の授業に取り組みました。」

伊江中の先生は日ごろから、合唱の指導や評価に課題を感じていらっしゃったそうです。そこで附属中の音楽教員が、ピアノで伴奏をしながら生徒たちに歌ってもらい、細かくアドバイス。生徒たちが専門的な指導を受けられたのはもちろん、伊江中の先生にとっては、自分の生徒を他の教員が指導したらどうなるのかを見る機会になりました。研修として、大変学びが多かったようです。

もちろん、各校で使い勝手のいい設備を整えていけるか、という問題は残ります。ただ、離島の教育では不利な状況になりがちな実技科目について、今回の実証実験で一定の成果や希望を感じられたのは、とても有意義でした

【今後の展望】定期的な遠隔授業や研修を続けていけるよう、さらなる環境整備を進める

新しいICT機器の導入にあたり、現場には「機器活用に気を取られ、授業の内容がおろそかになってはならない」という懸念もありましたが、それは杞憂でした。ICT支援員のサポートもあり、機器活用は年を追うごとにスムーズになってきていると言います。
今後の課題は、ICT活用による遠隔授業や研修を日常的に続けていくこと。イベント的な取り組みではなく、日ごろから機会を増やしていくには、工夫が必要になります。

「現状はそれなりの準備が必要になるため、突発的な実施は難しい。でも、各校の年間授業計画に組み込んで、教科ごとにうまく連携しながら続けていければと考えています」と、比嘉校長も意欲的でした。

また、コロナ禍のなかでは、休校時のオンライン授業も見込まれています。授業をする教員だけでなく、黒板や実技のときの先生の手元などを映すカメラを用意することで、より臨場感あふれる授業映像の配信が可能となるでしょう。こうした知見は、実際に遠隔授業をしていく中で見つかったものです。

ICT導入によって、離島での教育がブラッシュアップされることは間違いありません。インフラやICT支援員の配置など、環境整備の問題は依然としてあるものの、大きな希望が見えてきています。

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