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事例

2022.09.09

フレキシブルに活用できる校舎と新たなICT機器で、対話の深まる学びに挑戦【海老名市立今泉小学校】

目次

<目指したこと>
お互いの違いを受け入れ、協力し合える人に育てたい

「聞いているだけの授業から、お互いに伝えあう能動的な学びの場へ」のbeforeとafterをまとめた図

神奈川県海老名市では「しあわせをはぐくむ教育」という目的を掲げ、新しい授業スタイルの確立による学力向上や、学校ICTの整備・活用といった目標に取り組んでいます。海老名市教育委員会の伊藤教育長は、いま海老名市が目指す“教育の姿”を、次のように語りました。

「海老名の子どもたちには、学力を高めるだけでなく、多様性を尊重する人になってほしいと願っています。児童同士の対話や双方向の授業を実施することで、多くの友と関わって課題を解決したり、さまざまな意見に耳を傾けて認め合ったりする機会を、小学校生活のうちに経験できるでしょう。そうした学びは、社会に出たあともおおいに役立つものと考えています」(伊藤教育長)

ただし、従来の教室は、教師から児童への一方通行になりがちな環境のため、海老名市が目指す教育の姿がなかなか実現しにくい状況でした。そこで、児童数も増えた海老名市立今泉小学校では、新たな発想で教育環境を整え直そうと、フロアの中央に多目的スペースを配置して、その周りを取り囲むようにそれぞれの教室を配置しました。廊下と部屋を間仕切りで分断することなく、授業に合わせて自由なレイアウトができる空間を作り出したのです。

教室や多目的スペースの様子

写真:授業に合わせて自由なレイアウトを生み出すオープンな教室環境

ひらかれた校舎で、能動的な学びを生む

校舎増築と同時に進められたのが、新たなICTの導入でした。GIGAスクール構想によって一人一台端末は実現していたため、今度はその端末を最大限に活用し、統合的な学びを生み出すのが狙いです。そこで今泉小学校には、可動式/テーブル埋込式のインタラクティブホワイトボード(以下IWB)や、キャスター付きのホワイトボードと一体型の超短焦点プロジェクターが導入されています。超短焦点プロジェクターは取り外しができるので、床や天井に投影するといった活用も可能になりました。

テーブル埋め込み式IWB(32インチ電子黒板)

下置き型プロジェクター(超短焦点PJ WX4153)スクリーン

ICT機器に求める理想は、コンパクトで使いやすく、学習する際に場所の制約を受けないことです。そこで、児童たちが自分の端末に入力した意見を、ひとつの画面に集約して映し出し、みんなで見られるようにしました。グループごとに集まったスペースにテーブル埋込式のIWBを移動させ、みんなで画面をのぞき込みながら学習するのも手軽に行えます。また、新しいプロジェクターは、床や天井にも投影できるのが大きな魅力。床に敷いた紙の上に地図を投影し、マジックでどんどん書き込んでいくような、自由な発想を伸ばす学習が可能になります」(伊藤教育長)

今泉小学校の和田校長も「従来のプロジェクターはすべて天吊り式でした。黒板の右側にしか映像を映せないため、板書をするスペースが半分に限られてしまっていて、子どもたちの学びのスタイルが画一的であることに課題を感じていました。可動式を取り入れたのは、シンプルだけど大きな変化ですね」と、続けます。

<実現できたこと>
フレキシブルな授業で、子どもたちの意見交換も活発に

校舎が増築され、新たなICT機器が増えたことで、今泉小学校の学びはどのように進化したのでしょうか。

まず、黒板の好きな位置にプロジェクター投影ができるようになったため、板書の自由度がぐっと上がりました。横書きする算数や英語などの授業では、右に投影。縦書きする国語では左に投影しています。

「また、複数クラスの合同授業や学年集会では、フロアの中央に位置している多目的スペースに機器を運ぶ場面も少なくありません」(和田校長)

可動式のプロジェクターによって、フレキシブルな授業スタイルが可能に

※画像はイメージです

とくに、子どもたちの意見を瞬時に一覧できることは、学習に大きな変化をもたらしました。子どもたちは、手元のタブレットから自分の意見を提出。IWBやプロジェクターを使って、すべての意見を映し出します。模造紙などに意見をまとめ、黒板に貼り出して発表していた昔ながらの授業より、圧倒的に早く手軽です。

「これまでの授業では、積極的な子どもだけが手を挙げて、意見を発表するスタイルが定番でした。でも、すべての子どもの意見を表示し、よいものを随時ピックアップしながら議論を深めることで、授業が双方向の協働学習に変わります。誰もが意見を述べやすいし、参加する意義も高まるのです。挙手と口頭での発表より抵抗が少ないようで、普段発言する機会が少ない児童の考えを取り上げることができるなど、すでにポジティブな変化が見られています」(和田校長)

自分の考えを多くの人に共有し、議論を深めるスキルは、これからの社会を生き抜いていくために必要なもの。子どもたちは授業支援ソフトやプレゼンテーションソフトも使いこなし、授業のなかでそうした経験を重ねています。コンパクトで持ち運びできるICT機器と、フレキシブルに使える新校舎が、学びをぐっと深めているようです。

新校舎ができてから、まだ数ヶ月。「2学期は低学年がまち探検に出かける授業もあるので、事前学習に地図の床投影をしてみたいと考えています。星座を天井に映し出してみるのもいいですね。新しい校舎を活用して、さらなる学びの充実を図っていきたい」と、和田校長は語ります。

地図を床投影することによって、視覚的に印象付づることができる。また、教科書の中の挿絵ではわかりづらいものも全体を写すことが可能になる。

※画像はイメージです

今後は時間割の共有など、さらなるオープンな学びを目指す

さらに伊藤教育長は、今後の大きな展望を示しました。

「今泉小学校はせっかく学年ごとにフロアを分けているので、今後はクラスの枠を超えた時間割の共有などにもチャレンジしてほしいと考えています。クラスにとらわれずフロア全体で『2時間目は算数。習熟度別の部屋に移動してください』としてみたり、社会で『この部屋は工業、この部屋は農業を学びます。興味のある部屋に行きましょう』としてみたりすれば、よりいっそうオープンな学びが実現するのではないでしょうか。児童が自分の意志で学習内容を選ぶ仕組みなら、モチベーションも上がるでしょう。それぞれ違う課題に取り組んだり、成果を共有したりする下地は、ICT機器によってずいぶん整ってきていると感じます」(伊藤教育長)

そうした挑戦に向けて、機器の活用定着は課題のひとつです。デジタルネイティブの子どもたちに続いて、教員たちも研修や指導事例の共有などに努めながら、活用スキルの向上に取り組んでいます。

伊藤教育長はこれからも、海老名市全体で授業スタイル変革のきっかけとなるプロジェクターやIWBの導入を進めるほか、遠隔教育環境整備も視野に入れ、市の目指す「しあわせをはぐくむ教育」を実現していきたいとしました。

「私は、時空を超えるのがICTの使命だと思っています。今泉小学校の机に向かっているけれど、機器の先では東北に住む同学年の子どもがいたり、オーストラリアの中学生がいたり……いまいる場所から、人種・年齢を問わず世界の様々な人たちとつながって、自分の考えや思いを発信してほしい。老若男女と交流するそうした経験のなかで、一人ひとりに異なる考え方があることや、それを認め合い伸ばしていくことの大切さを体感できると思います。そのために、私たちも環境整備に力を尽くしていきたいですね」(伊藤教育長)

左:海老名市教育委員会 教育長 伊藤 文康 氏 / 右:海老名市立今泉小学校 校長 和田 修二 氏

ご導入頂いた機器

  • RICOH Interactive Whiteboard(IWB) D6520 8セット
  • RICOH Interactive Whiteboard(IWB) D3210 2セット
  • 下置き型プロジェクター(超短焦点PJ WX4153)スクリーン 4セット
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