情報教育
2026.02.25
デジタル学習基盤における学習者主体の学びと教師の支援 「生成AIの活用を学校の中でどう進めるか」
目次
生成AIの活用を学校の中でどう進めるか
新たなツールとして、AIの活用が期待されています。特に、生成AIは日常生活の中で活用が進んできています。
学校の中で、生成AIをどのように活用していけば良いのか、その進め方とポイントを考えてみたいと思います。
基本的な考え方
学校や家庭で、生成AIをどのように活用していけば良いか、その基本的な考え方が文部科学省から示されています。
2024年12月に文部科学省が公開した「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(以後:文部科学省ガイドラインV2)から、児童生徒の生成AIの活用の在り方を考えてみたいと思います。
まずは、教師や保護者が生成AIを活用して、その特徴や課題を把握することが重要です。
特に、学校の中では、教職員全員が同じ目的や内容で生成AIを活用していくことで、全体のスキルアップにもつながります。教職員が個別に取り組んでいくことも必要ですが、できるだけ格差を生まないように全体での取組を推進していくことが求められます。
次に、教職員がそれぞれの専門分野において、授業や校務で生成AIを活用していくように進めていきます。
児童生徒の活用よりも、教師の活用が先に進んでいくことが、その後の活用にも影響してくると思います。
次に、児童生徒の生成AIの活用です。まずは、児童生徒が生成AIの特徴や活用のポイント、留意点を理解していくことが大切です。それから、生成AIを学習ツールの1つとして活用していくようにします。
その際に、あくまでも、多様なツールや情報源の1つであり、「Only AI」とならないようにしてほしいです。「With AI」で取り組んでほしいところです。
児童生徒の生成 AIの利活用場面としては、
①生成 AI自体を学ぶ場面
②生成AIの使い方を学ぶ場面
③各教科等の学びにおいて積極的に用いる場面
の3つの場面が想定されます。
まず、①生成 AI自体を学ぶ場面 では、生成 AI の仕組み、利便性・リスク、留意点を学びます。
②生成AIの使い方を学ぶ場面 では、より良い回答を引き出すための生成 AI との対話スキル、ファクトチェックの方法等
③各教科等の学びにおいて積極的に用いる場面 では、児童生徒が問題を発見し、課題を設定する場面や、自分の考えを形成する場面、異なる考えを整理したり、比較したり、深めたりする場面等でそれぞれのニーズに応じて活用する場面が考えられます。
児童生徒の具体的な活用場面
さらに、授業等での具体的な場面について、文部科学省のガイドラインは以下のような内容を例示しています。それぞれの内容について、詳しく見ていきたいと思います。
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1. グループの考えをまとめる、アイディアを出す活動の途中段階で、一定の議論やまとめをした上で、足りない視点を見つけ議論を深める目的で活用する |
1.アイディアを出し、議論を深める目的で活用する
グループの考えをまとめる・アイディア出しの途中で不足視点を見つける場面では、生成AIは「外部の相棒」として批判的な立場の相手の役割を担うことができます。
最初に自分たちでKJ法やホワイトボードで論点を整理し、仮の結論や未解決の問いを言語化してから、その要約を渡して「抜けや偏り、反対意見、利害関係者の視点、既存の類似事例」を3〜5点に絞って挙げさせます。
続けて、提示された不足視点のうちどれを採用するかをグループで決め、採用理由と却下理由まで記録します。
こうすると、AIの出力は議論の“燃料”として働き、協働での意思決定と説明責任が残ります。最終成果物は児童生徒自身が編集し、引用した視点は「参照元:AI、採否と理由」を明記して透明性を確保します。
2.英語学習の相手としての活用
英会話の相手として活用したり、より自然な英語表現に改善したり、一人一人の興味関心に応じた単語リストや例文リストを作成したりすることができます。
英語学習では、会話相手や表現改善、個別の語彙・例文作成に使うのが効果的です。
レベル設定(CEFRなど)と場面設定(旅行・部活動・進路面談など)を最初に伝え、学習者の興味に基づく語彙リストと例文を出させます。
会話練習では「文法・語彙・発音のフィードバック方針」を事前に決め、例えば「誤りは一度に一つ、簡潔な訂正と一つの理由、別表現を一つ」というルールで行うと負荷が適切になります。児童生徒は練習ログから「今日の表現ベスト3」「言い換えパターン」を自分のノートに再整理し、次回の目標を立てます。
AIは発話量の確保と多様なフィードバック提供に長けますが、最終的な評価は人間の教師が、内容の妥当性や発話の自然さも含めて行います。
3.外国人児童生徒等の日本語学習や学習場面での補助のために活用する
外国にルーツのある児童生徒の日本語学習や学習補助では、生成AIを活用して、やさしい日本語に言い換えたり、ふりがなを付与したりするなどが考えられます。
また、重要語の多言語化、例文の文化的配慮などが適切に行われます。
例えば、授業資料の要点を短く二言語で提示し、本文は原文のまま扱うことで、誤訳のリスクを抑えることができます。班活動では、AIが出したサポート文を活用しながら、同級生との対話を増やす計画にして、児童生徒が孤立しないようにします。
固有名詞や評価・進路等の重大な文面は、必ず教師が確認する運用を徹底します。
4.自ら作った文章を生成AIに修正させたものを「たたき台」として、自分なりに何度も推敲する
児童生徒が自分で書いた文章を生成AIに添削させ、その結果を「たたき台」にして何度も推敲する場面では、三段階の型が機能します。
第一に、意図・読者・長さ・評価観点をメモし、自分の初稿を出します。
第二に、その意図を添えてAIに「文のねじれ、論理の飛躍、主語・述語の対応、語彙の重複」を指摘させ、改善案を複数提示してもらいます。
第三に、提示案を鵜呑みにせず、自分の言葉で再構成して、採用した修正・採用しなかった修正と理由を“推敲ログ”として残す、という流れです。
ここでの学びは、完成文そのものではなく、修正の判断基準と言語化にあります。出典や事実関係が絡む場合は、AIの提案を必ず一次情報で確認することも指導します。
5.プログラミングの授業において、児童生徒のアイディアを実現するためのプログラムの制作に活用する
プログラミングの授業では、児童生徒のアイデアを実現するための分解(decomposition)、疑似コード化、テストケース作成、デバッグの質問整理などに生成AIを用います。
仕様や制約(使用言語・利用可能ライブラリ・入出力形式・実行環境)を先に与え、「まず疑似コード→次に最小実装→最後に拡張」の順で伴走させると、丸写しを避けつつ設計力を伸ばせます。
提出物には、AIに尋ねた内容・返答・自分の判断を簡単に添えさせ、教員は“過程”も評価します。コードの出典やライセンス、セキュリティに関わる箇所は、必ず人間がレビューする前提を徹底してください。
望ましくない活用
文部科学省のガイドラインでは、児童生徒が学習場面で活用する上で、不適切と考えられる例として、以下の内容が挙げられています。
不適切と考えられる例
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1. ⽣成AI⾃体の性質やメリット・デメリットに関する学習を⼗分に⾏っていないなど、情報モラルを含む情報活⽤能⼒が⼗分育成されていない段階で、⾃由に使用する |
これらの内容を踏まえて、留意すべきポイントをいくつかの視点で整理してみたいと思います。
1. 生成AI自体の性質やメリット・デメリットを学習していない
生成AIは「誤り(ハルシネーション)」や偏りのある出力を、そのままもっともらしく出力することがあります。
そのようなハルシネーション等のように、児童生徒が生成AIの仕組みやメリット・デメリット、活用上の留意点を理解していない状況下で生成AIを活用すると、誤情報を鵜呑みにしてしまうことが考えられます。
また、児童生徒が氏名・写真・位置情報等の個人情報を不適切に入力してしまうなど、不適切な入力を行ってしまったりすることにつながります。
まず、児童生徒が生成AIを活用する前に、事前の学習を適切に行っておくようにします。
例えば、生成AI利用の手引やショート指導(10〜15分)を活用して、用途・禁止事項・出典確認等のルールを事前に指導します。また、生成AIを活用した授業では、生成AIの活用目的や内容を考えさせる場を設けるとともに、教科書・資料集・百科事典等での二次資料を用いた裏取りを必須にします。
2. 生成AIの出力をレポート等としてほぼそのまま提出
生成AIの出力をそのまま提出させることで、児童生徒の思考や表現のプロセスが見えなくなり、適切に評価することができなくなります。
また、独創性や創造性、オリジナリティを損なうとともに、引用の明示などの学術的誠実性を身につける上でも十分配慮する必要があります。レポート等の文章化された結果だけでなく、プロセスやパフォーマンスも併せて評価することが求められます。
例えば、構想メモ→下書き→推敲の履歴(ログ)を作成して、どのような場面で生成AIを活用したかを記録させることも考えられます。また、提出時にAI使用欄(使った箇所・採用した理由・出典確認の方法)を添付させるのも1つの方法です。レポートだけでなく、口頭試問や動画の提出なども考えられます。
3. 詩・俳句・音楽・美術等の表現や鑑賞で、初発の感想や独創性を求める場面
創作・鑑賞の初発の感想では、学習者の内的経験・語彙・価値観を言語化する営みです。
創作や鑑賞の当初から生成AIによる表現や解釈の例を児童生徒が参考にすると、一定の固定観念の誘導が起こったり、表現が画一化されたりすることが考えられます。
例えば、俳句の授業で、AIが出した季語・比喩の巧みさに引きずられて、同質の句が大量に並ぶなどが考えられます。初発に感じた、自らの違和感や「わからなさ」を言語化する大切な機会を逃してしまうことになります。
活動のプロセスで活用を考えるのがコツです。
①初発(自分の言葉・自由連想)→②交流(周囲との共有)→③参照(生成AIの出力と比較参照)→④再創作・再鑑賞といったプロセスの中で、生成AIは③以降の比較対象として限定する活用方法も考えられます。
4. 調査活動で、教科書等の質の担保された教材に触れる前に安易に利用
AI出力は出典が曖昧であり、学習指導要領の内容や目標と食い違うことが考えられます。
そのことによって、学習の基礎概念の取り違えや誤学習を招くことが想定されます。例えば、教科書等のように、該当する単元の内容・系統性に沿った良質で質が担保された教材や資料を提供する必要があります。
それらの問題点を解消するには、教材や資料を提供する順序を明らかにする必要があります。
例えば、教科書・資料集→信頼できる事典→公的機関サイト→AIの補助などのように、用語定義・概念図を教科書ベースで作成した上で、生成AIで別の表現や内容を収集して、出典を添えて追加するような流れも考えられます。
5. 教師が正確な知識でコメント・評価すべき場面で、AI出力のみに頼る
評価や指導は、教師が児童生徒の実態や授業の文脈に即して、個別に形成的な評価を与えながら進めていくものです。生成AIが出力する内容は、現状では、一般論になりがちなことが多く見られ、場合によっては、誤り・偏りのリスクも考えられます。
公平性・説明責任の観点からも、生成AIが教師の判断を代替することはできません。
例えば、生成AIの活用は、評価内容の下書き支援に限定した上で、最終コメントは教師が編集することが考えられます。評価の最終決定等では、生成AIの出力を直接使わないルールも考えられます。
6. 教師が専門性を発揮し、人間的な触れ合いの中で行うべき教育指導を実施せず、AIのみに相談させる
いじめ、不登校、家庭の事情、進路の悩み等のように、人間関係や、感情・価値観、倫理に関わる課題は、学校や管理職、教師の責任のもとで対応すべき事項です。
これらを生成AIに委ねると、安全確保や緊急対応、個人情報の保護が不十分になり、子どもの権利が損なわれる可能性があります。
例えば、児童生徒がいじめの訴えを学校や教師に言わず、生成AIにのみ相談するなどは、避けるべき事項となります。
そのためには、生成AIの利用場面を限定するとともに、相談ルートの明確化が必要です。教師への相談を促すとともに、プライバシー配慮の観点から、個人情報を生成AIに入力しない指導も徹底することが求められます。