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寄稿コラム

2022.03.17

ICT環境を高次の学びに活かす〜1人1台時代の大型提示装置の役割〜

目次

前回のコラムでは「1人1台の学びを観察する視点〜デジタル・タキソノミーとは?〜」について寄稿させていただきました。

前回のコラムは、「6つの認知過程次元」(1記憶する、2理解する、3応用する、4分析する、5評価する、6創造する)と、これに対応した「学習の動詞」(デジタルの活用も含む)を意識しておくことで、学習者の姿から「どの段階の認知や学習スキルを獲得しているのか?」について観察しやすくなる、といった内容でした。

今回は、この視点の延長で、「ICT機器」中で、最も活用されているものの一つである「大型提示装置」について考えてみたいと思います。

「大型提示装置」の整備状況

まず、「大型提示装置とは?」という方もおられるかもしれませんので、定義を共有しておきましょう。
文部科学省が毎年3月に調査をしている「学校における教育の情報化の実態等に関する調査 ※1」では、「大型提示装置」とは「プロジェクタ、デジタルテレビ、電子黒板のことをいう。」とされています。この記事も同じ定義で進めていきます。

令和2年度の調査結果(令和3年3月時点の数値)によると、公立学校(小中学校・中等教育学校・高等学校・特別支援学校)の普通教室の大型提示装置の整備率は71.6%と報告されています。
前年の大型提示装置の整備率は60%でしたので、1年間で119%伸びており、今後も増加しそうです。整備状況は地域によって異なりますが、100%近く整備が進んでいる地域もあります。
大型提示装置は、日本全国の多くの普通教室で活用されているICT機器の代表格と言えるでしょう。

これまでの「大型提示装置」の役割とは?

「JAPET&CEC ※2」によると、大型提示装置は「児童生徒にさまざまなことをわかりやすく伝える道具」とされています。
また、「伝統的な黒板やチョークの役割を補い拡張する道具(電子黒板)として、ICTにそれほど詳しくない先生でも、 ICTと全く関係しない授業でも、簡単に活用することができる。」とされています。
その使い方は、児童生徒にデジタル教科書を大きく映して見せたり、写真教材を提示したり、動画教材を視聴したり、音声教材を再生したり、コンピュータの画面を示しながら操作方法を説明する、などが挙げられます。
これまでの「大型提示装置」の役割は「児童生徒の理解を深めるという目的のために、教師が学習内容を児童生徒にわかりやすく伝えるために活用する道具」と言えそうです。
デジタル・タキソノミーの視点に照らしてみると、「1記憶する、2理解する」の段階を支援しやすい、「インプットを促すICT機器」という役割を担っていたと考えられます。

1人1台時代の大型提示装置の役割とは?

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大型提示の活用とデジタル・タキソノミーの認知次元の関係(筆者作図)

GIGAスクールの環境を日常的に活用し、そのスタイルを確立している(しつつある)先生の授業では、「大型提示装置」の役割が変わってきているのではないでしょうか?
1人1台の学習者用コンピュータを活用し、児童生徒の主体的・対話的で深い学びを展開する場合、児童生徒の考えや意見をクラスで共有したり、学習の成果を発表する場面で「大型提示装置」を活用する機会が増加していることでしょう。
1人1台時代の大型提示装置の役割は「学習者が学習の過程や成果を表現するために活用する道具」と言えそうです。

デジタル・タキソノミーの視点に照らしてみると、「3応用する、4分析する、5評価する」という高次元の認知や学習スキルが発揮される、求められる段階に該当しやすく、「アウトプットを促すICT機器」という役割が新たに加わったと考えられます。

こうした視点を意図して、児童生徒が「大型提示装置」を活用することができれば、思考力・判断力・表現力の高まりや、知識・技能の活用に繋がり、より深い学びへ導くことが期待できそうです。

単元の目標や評価の観点に応じて、バランスよく使い分ける

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「みとり」のポイント(筆者作図)

とは言え、今後の「大型提示装置」の活用が「学習者主体のアウトプット」ばかりになるわけではありません。
単元の初めなど、その教科の知識や技能などを記憶したり、理解したりする段階では、従来のような「教師が主体となって教材などを提示する」という活用方法が適しているでしょうし、単元の終盤で学習成果がまとまってきた段階では「学習者が主体となって学習成果を表現する」という活用方法が採用されることでしょう。

単元の目標や評価の観点に応じて、バランスよく使い分けることが大切になるはずです。その時に、デジタル・タキソノミーの視点も参考にしていただけると、アウトプットの質をより高めることができると思います。

ICT活用の留意点も忘れずに

学習成果を表現する場面では、スライド作成ソフトなどにまとめられた資料を大型提示装置に、投影しながら発表するケースも多くなると思いますが、この時に注意していただきたいのは「見た目が整っているからといって、学習者の頭の中も整っているのか?」という部分です。

ICTを活用すると、綺麗にレイアウトされた資料を作成しやすくなりますし、文章も「コピペ」しやすくなります。
これを鵜呑みにしていると、「ICTの活用は進んできたけれど、知識・技能の定着が弱い気がする」や「確認テストなどで点数が取れない」など、効果を感じ難い状況に陥ることがあります。

そうならないためには「何が分かったのか、どのように分かったのか」「何ができるようになったのか、どのようにできるようになったのか」という部分をできる限り、言語化するように促すことをお勧めします。
口頭での説明もよいでしょうし、文章を入力してもらってもよいでしょう。
確かなタイピングスキルがあれば、言語化を助けてくれます。
こうした点に留意しながら、「大型提示装置」に代表されるようなICT機器、またアプリやシステムなどの活用を計画してみてください。

参考:※1 文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」

参考:※2一般社団法人日本教育情報化振興会「ICT教育環境整備ハンドブック2021」

※本資料に掲載のその他の会社名および製品名、ロゴマークは各社の商号、商標または登録商標です。

筆者

株式会社NEL&M(ネル・アンド・エム) 代表取締役/ICTスクールNEL 校長 田中 康平 氏

・教育情報化コーディネータ 1級(2018年認定 ※国内5人目)
【委員等】
・国立教育政策研究所「全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた試行・検証のためのCBT問題開発に係る調査研究検討委員」(2021年度)
・経済産業省「未来の教室実証事業」教育コーチ(2018~2019年度:麹町中学校担当)
・佐賀県教育委員会 ICT利活用教育推進に関する事業改善検討委員(2015~2019年度)

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