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寄稿コラム

2023.01.31

「児童生徒のICT活用学習力」を支えるICT汎用スキル 4 ~カメラ機能のより良い活用方法~

「児童生徒のICT活用学習力」を支えるICT汎用スキル 4~カメラ機能のより良い活用方法~

GIGAスクール構想による学習環境を活用した授業実践を行うためには、児童生徒には「ICT活用学習力」と呼ぶべき資質・能力の育成が不可欠であるとも考えられます。

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目次

これまでのコラム記事(※1)では、「児童生徒のICT活用学習力」というキーワードと、ICT汎用スキルとして「ホームポジションによるタイピングスキルの習得」「表計算ソフトの活用」「スライド作成ソフトの活用」について紹介しました。
今回は学習者用コンピュータで頻繁に活用されている「カメラ機能」を取り上げ、より良い学びに生かす考え方や撮影のコツなどを提案します。

「カメラ機能で育まれる認知的な能力とは?」

GIGAスクール構想で整備された学習者用コンピュータの標準仕様に記載され、タブレット端末だけではなくラップトップ型のコンピュータなど、筐体の形やOSを問わず内蔵されている「カメラ」
今回のコラムでは、内蔵「カメラ」と撮影のための「アプリ」を組み合わせて「カメラ機能」として書いています。「カメラ機能」は幅広い学年や教科で活用されるお馴染みの機能の一つです。
学校で日常的に目にされているであろう、児童生徒が「カメラ機能」を活用する姿の中に「どのような認知が働いているのか?」について、「1人1台の学びを観察する視点 ~デジタル・タキソノミー~」(※1)で紹介した「6段階の認知過程次元」を基に考えてみたいと思います。

・記録のために写真や動画を撮影する場合

記録した写真や動画から、学習内容を振り返ったり、関連性を考えたりするような活動では「1 記憶する~2 理解する」という段階の認知が働きやすいと考えられます。
特に、撮影後の活用についてそれほど意識していない状況では、写真や動画は記憶を補助するような役割にとどまるのではないでしょうか。

・撮影後の用途を意識して、構図や繋がりなどを計算(想像)しながら撮影する場合

例えば「学習内容を発表するスライドやムービーを作成する」というその後の目的が明確な場合、児童生徒は自分たちの意図が伝わりやすく作品の構成に適した写真や動画を撮影しようとするでしょう。
その中には、構図や繋がりを意識することはもちろん、対象を吟味したり、撮影方法工夫しようとする姿が見られます。
「3 応用する~4 分析する~5 評価する」といった高次元の認知的な能力が育まれている段階だと考えられます。

・撮影した写真や動画を確認した後に、より良い表現を求めて撮影方法を改善する場合

「カメラ機能」の最大の特徴は「結果を直ぐに視覚的に確認できる」という点にあります。
撮影の結果、良い作品だと思えば「なぜ、良い作品を撮ることができたのか?」を考え、悪い作品だと思えば、「上手く撮れなかった原因は何か?」を考え、「何を改善すれば良いのか?」を自問しながら改めて撮影にトライする、という行動が見られます。
「3 応用する~4 分析する~5 評価する」といった高次元の認知の働きを伴う試行錯誤を繰り返す姿だと言えるでしょう。
こうした経験を重ねることで「カメラ機能」をよりよく活用するための知識・技能や、発展的な活用を支える思考力・判断力・表現力の向上も大いに期待できます。

「カメラ機能」を活用した高次元の認知能力(改善する)を促すためのコツ

「カメラ機能」を活用するにあたって、いくつかのコツを押さえておくと、「5 評価する」という高次元の認知能力が働きやすくなり、撮影方法の工夫や改善が促され、表現力が高まります。
そのための2つの方法を提案します。

(1)グリッド線を表示し「水平・垂直」を意識して撮影する

「グリッド線」とは、カメラで撮影を行う際に表示される格子状の線のことです。
児童生徒が使用する学習者用コンピュータのカメラアプリで「グリッド線」を表示していない場合は、是非「グリッド線の表示方法と基本構図」に関する資料をダウンロードして設定してください。
「グリッド線」の表示は、どのOSのコンピュータでも可能です。

表示をオンにすると、図(a)のような格子が表示されます。
article_00039_02.png図(a)グリッド線が表示されたカメラアプリの画面イメージ

この線をガイドに「水平・垂直」を常に意識した写真や動画を撮影することで、格段に活用しやすい学習素材となります。
それでも被写体が斜めになった場合は、編集アプリの「トリミング機能」で画角を調整することもできますが、おおむね水平・垂直が揃っていれば「元のサイズ」の写真や動画を活用できる方が高画質を保ちやすいというメリットを生かすことができます。
「水平・垂直」を意識するのは写真撮影の基本でもあり、上達を早める大切なポイントです。

(2)基本的な「構図」を理解して撮影に生かす

先程の「グリッド線」のを表示させることですぐに「三分割法」を利用できるようになります。
何気ない風景や人物も「三分割法」を意識して撮影するとポートレート作品のようなバランスの良い構図になるでしょう。
ちなみに「三分割法」の例として葛飾北斎の富嶽三十六景にある「神奈川沖浪」(図b)(※2)が有名です。伝えたいもの(被写体)がはっきりしている時などは「日の丸構図」を使って注目を集めやすい表現を試してみるのも良いと思います。

児童生徒が写真や動画を撮影する場合に「構図」を意識できると、撮影の結果が格段
に良くなり、表現力も高まります。
基本的な「構図」として「三分割法」「二分割構図」「対角線構図」「日の丸構図」「放物線構図」などがありますが、それぞれの特徴を理解しておくと、被写体の良さを引き出したり、意図を伝えやすい撮影方法が身につきやすくなりますし、撮影方法の工夫や改善に繋がります。
article_00039_03.png 図(b)「富嶽三十六景・神奈川沖浪」と三分割法(交点に大波、小波、奥の富士が配置されていることがわかる)

とても便利な「カメラ機能」も、漫然と活用していては勿体ないですよね。
撮影する目的や方法を確認するのはもちろん、グリッド線や構図などのコツを押さえ、さらに良い写真や動画になるように、撮影方法を工夫したり改善したりしながら撮影する。そうした活動で見えてくる、「高次の認知的な能力が高まる様子」をぜひ観察してみてください。
良い写真や良い動画は、そのまま「良い教材」になります。「カメラ機能」を通した豊かな表現力が発揮される、より良い学びを目指していきましょう。

※1 「1人1台の学びを観察する視点 ~デジタル・タキソノミーとは?~」
※2 「著作権フリー作品『富嶽三十六景』」 

※本記事に掲載のその他の会社名および製品名、マークは各社の商号、商標または登録商標です。

筆者

株式会社NEL&M(ネル・アンド・エム)代表取締役/ICTスクールNEL 校長 田中 康平 氏

・教育情報化コーディネータ 1級(2018年認定 ※国内5人目)

【委員等】
国立教育政策研所「令和4年度全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた調査問題の開発・文部科学省CBTシステム(MEXCBT)への搭載およびCBT問題における合理的配慮の在り方に係る調査研究事業」(2022年度)
・CBT問題の開発及び実証に関する検討委員・CBT配慮問題の開発に関する検討委員
・経済産業省「未来の教室実証事業」教育コーチ(2018~2019年度:麹町中学校担当、2021年度:広島県教育委員会、鹿児島市教育委員会担当)
・佐賀県教育委員会 ICT利活用教育推進に関する事業改善検討委員(2015~2019年度)

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