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寄稿コラム

2024.08.29

Next GIGA→Beyond GIGA〜教育DXへ Vol.2 GIGAスクールと著作権「ICT活用や探究学習での『引用・リファレンス(参考文献)』の書き方」

GIGAスクールと著作権「ICT活用や探究学習での『引用・リファレンス(参考文献)』の書き方」

株式会社NEL&M 田中 康平氏に「GIGAスクールと著作権「ICT活用や探究学習での『引用・リファレンス(参考文献)』の書き方」」をご寄稿いただきました。本コラムの理解をより深めることが出来る資料をこちらからダウンロードいただけます。

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目次

GIGAスクールで整備された学習用端末の活用が進んだ学校や地域では、授業を通して作成される資料も、スライド資料、ポスター、論文など多様化しています。
ここで気になることが一つ。使用された画像、参照したWebサイト、参考文献(以下リファレンス)に関する情報が書かれていないケースを目にすることがあります。著作権法的にも学習の発展の面からも改善すべき課題です。
適切な引用やリファレンスの書き方を学び、実践することは、知的財産を尊重する姿勢を育むだけでなく、学習成果の信頼性を高めることにも繋がります。
今回のコラムでは、引用情報やリファレンスが必要な理由と、小学生、中学生、高校生向けに具体的な書き方について解説します。

引用情報やリファレンスが必要な3つの理由

1. 著作権法第32条の観点から

日本の著作権法第32条には、「公開されている著作物を引用して使うことができる」と書かれています。これにはいくつかのルールを守る必要があります。
これらのルールが守られている場合は、著作権者の了解なしに利用できます。もし、出所の明示がなく、引用部分も曖昧で、著作権者の了解も得ていない場合は「著作者の権利を侵害してしまう」可能性がありますので注意が必要です。

レポート作成などでの「引用」(第32条第1項)
  どうすれば自由に利用できる?
  ①既に公表された著作物であること
  ②利用方法が、「公正な慣行」に合致していること(作品を引用する「必然性」があること)
  ③利用の目的が、報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること(例:引用の分量については、引用される部分(他人の作品) が「従」で、自ら作成する部分が「主」であること)
  ④引用部分については、カギ括弧などを付して明確にすること
  ⑤著作物の題名、著作者名などの「出所の明示」 をすること
文化庁「学校における教育活動と著作権(令和5年度改訂版)」(1)より引用


2. 成果の確かさや妥当性を示すため

引用のルールを守ったり、リファレンスを正しく書くことは、学習成果の信頼性を高めることに繋がります。どのような資料や情報を使い、考え、まとめられたのかが明確であれば、学びの確かさや妥当性なども評価されやすくなるでしょう。
逆に、これらが不明瞭、不正確では、せっかくの学習成果に疑問を抱かせることにも繋がりかねません。多様な情報を活用して学習する時代には、引用の方法やリファレンスが確かなものであることも重視したいところです。

3. 学びの足跡・バトンをつなぐため(他の人が参照し学びを深めるため)

他の人が同様のテーマについて学習するとき、先人の学習成果に引用やリファレンスが記されていれば、どの資料や文献から学ぶことができるのか、またその道筋などを知ることができます。
過去の学習や研究の成果を活かすことで、その分野の基礎的な内容を理解し、さらに発展させる足場を作ることにも繋がります。そして、学習した成果を正しく引き継ぐことは、自分だけの学びで終わらせずに、その後の学びに貢献することも意味します。
GIGAスクールなど大きな予算(税金)で整備された環境で学んだことを個人で消費するような形で終わらせず、その後の学び手に還元するためにも、引用やリファレンスを大切にしましょう。

引用・リファレンスの書き方

引用の方法やリファレンスの書き方についてはいくつかのルールが定められています。これらに沿った形で適切に記載することが大切です。いくつかの例を紹介します。

【引用の方法】

1. 直接引用(内容は変更せず、短い文を引用する方法。)

他者の著作物の一部(短い文)を直接記載して引用する場合には、引用文の前後に引用符(鉤括弧「」)などを用い、本文と引用部分を明確に区別します。
内容は変更せず、原文のまま記載します。
article_00059_04.png

2. ブロック引用(内容は変更せず、長い文を引用する方法。)

他者の著作物の一部(長い文章=ブロック)を直接記載して引用する場合に用いる方法です。
引用文の前後に引用符(鉤括弧「」)などで括らずブロックとして引用し、内容は変更せずに原文のまま記載します。
ブロック部分は、本文よりも1行改行し、2文字下げます。
article_00059_03.png

3. 間接引用(引用した内容を要約・改変して記載する方法。)

引用したい書籍や論文の内容について要約したり改変したりして記載する方法です。
引用符(鉤括弧「」)などで括らず、本文の流れの中に記載するため、リファレンスを明記する必要があります。リファレンスの明記がないと「剽窃」が疑われる可能性があり、注意が必要です。
article_00059_05.png
いずれの引用方法でも、リファレンス(参考文献)のリストに、書籍等の情報を明記します。

【リファレンス】(参考文献)

リファレンスの書き方には、いくつかのスタイルがあります。ここでは、日本でよく使用されるSIST(科学技術情報流通技術基準)(3)の例を示します。


論文
 著者名.論文名.誌名.出版年,巻数, 号数, はじめのページ数-おわりのページ.
単行本
 著者名. 書名. 版表示,出版者,出版年, 総ページ数.
Webサイト
 著者名.“Webページの題名”. Webサイトの名称.更新日.入手先(URL,入手日(参照日).
独立行政法人科学技術振興機構「参考文献の役割と書き方」より


Webサイトのリファレンス例

リコー.学びの共創室.先行事例から学ぶ「生成AIの教育利用・留意点・2つの提案」.2024-07-24.https://service.ricoh.co.jp/education/articles/00057.html (参照2024-08-18).

これらの例を参考にして、用途に応じた引用の方法やリファレンスを書く習慣を身に付けてみてください。
学校や教育委員会での研修で利用しやすいスライド資料(PDF)も用意しています。「こちら」よりダウンロードしてご活用ください。
なお、「改正著作権法第35条」に関連し「授業目的公衆送信保証金制度」(4)を利用していても、文化庁の資料では「原則として著作物の題名や著作者名などの『出所の明示』をすることが必要となります。」(5)と示されています。著作権者の許諾を得なくともよい場合であっても、引用やリファレンスについて心がけておきましょう。

今後の期待

GIGAスクール環境を活用した学びの場では、情報の扱い方がこれまで以上に重要になっています。この環境を最大限に活かすためにも、教師と児童生徒が引用やリファレンスの重要性を理解し、日々実践することが求められます。特に次の3つを意識して取り組んでみてください。

「インターネット検索では元の情報(Webサイト)まで確認すること」
「関連書籍なども参照すること」
「書籍、資料、論文に書かれているリファレンスを確認すること」

適切な引用やリファレンスは、知識を深めるだけでなく、他者の学びに貢献する力を持っています。これは子どもたちの未来における情報活用能力の基盤となり、探究的な学びを深めていくことや、学問的な高みを目指す際の大きな助けとなるでしょう。
教育現場での実践が、子どもたちの明るい将来へと繋がっていくことを心から願っています。

参考文献
(1)文化庁.学校における教育活動と著作権(令和5年度改訂版).P7
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93869701_01.pdf
(参照2024-08-18
(2)リコー.学びの共創室.先行事例から学ぶ「生成AIの教育利用・留意点・2つの提案」.
2024-07-24https://service.ricoh.co.jp/education/articles/00057.html
(参照2024-08-18)
(3)独立行政法人科学技術振興機構.参考文献の役割と書き方.2011P24
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12003258/jipsti.jst.go.jp/sist/pdf/SIST_booklet2011.pdf (参照2024-08-18).
(4)文化庁.授業目的公衆送信補償金制度の概要.2020P11
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/92728101_03.pdf (参照2024-08-18).
(5)文化庁.学校における教育活動と著作権(令和5年度改訂版).P6
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93869701_01.pdf(参照2024-08-18

筆者

株式会社NEL&M(ネル・アンド・エム)代表取締役/ICTスクールNEL校長 田中 康平氏

株式会社NEL&M 代表取締役
ICTスクールNEL 佐賀本校 校長
教育情報化コーディネータ 1級(2018年認定 ※国内5人目)


【委員等】
国立教育政策研所「令和4年度全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた調査問題の開発・文部科学省CBTシステム(MEXCBT)への搭載およびCBT問題における合理的配慮の在り方に係る調査研究事業」(2022年度)
CBT問題の開発及び実証に関する検討委員・CBT配慮問題の開発に関する検討委員
経済産業省「未来の教室実証事業」教育コーチ(2018~2019年度:麹町中学校担当、2021年度:広島県教育委員会、鹿児島市教育委員会担当)
佐賀県教育委員会 ICT利活用教育推進に関する事業改善検討委員(2015~2019年度)


【カリキュラム開発関連】
・つくば市「つくばSTEAM コンパス」授業カリキュラムおよび教材開発担当(2023年度)
・加賀市「文部科学省 生成 AI パイロット校・生成 AI ファーストカリキュラム開発」( 2023 年度)
・大手旅行会社「観光データを活用した探究学習プログラム」

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