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寄稿コラム

2023.11.13

Beyond GIGA〜教育DXへ Vol.1 デジタル・タキソノミーによる「探究的な学習・PBL」のデザイン方法

デジタル・タキソノミーによる「探究的な学習・PBL」のデザイン方法

教育ICT専門のコンサルタントとして学校や教育委員会のICT活用などをサポートする傍らで、子ども専門のICTスクールを運営されている株式会社NEL&M 田中 康平氏が作成された、課題の解決に有効な教育学のフレームワークである「デジタル・タキソノミー」を用いた「探究的な学習・PBL(Project/Problem-solving based learning)」に関する資料をダウンロード頂けます。

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目次

GIGAスクール構想により全国の小中学校~高等学校で整備された「1人1台の学習者用端末」は、「日常的な活用」から「より発展的な学習のための有効活用」にシフトすることが期待されています。
一方で、活用の頻度などについて地域間や学校間の差も指摘されています。(※1)
導入から2~3年が経過し、当初よりも活用が低調となっている、活用してはいるものの有効性を実感し難い、といった状況も散見されます。
今回のコラムでは、そうした課題の解決に有効な教育学のフレームワークである「デジタル・タキソノミー」を用いた「探究的な学習・PBL(Project/Problem-solving based learning)」をデザインする方法を紹介します。

単元レベルの学びの設計図「デジタル・タキソノミー・テーブル」

「デジタル・タキソノミー」については、2022年2月に寄稿したコラム「1人1台の学びを観察する視点 ~デジタル・タキソノミーとは?~」(※2)で基本的な内容を紹介しました。「6つの認知過程次元」(1_記憶する・2_理解する・3_応用する・4_分析する・5_評価する・6_創造する)と、これらに関連する「学習者の動詞」を、児童生徒の学びを観察する視点に活用することを提案しました。
そこからもう少し掘り下げてみましょう。

デジタル・タキソノミーの基盤にある「改訂版タキソノミー」(※3)では、「6つの認知過程次元」と「4つの知識次元」(A_事実的知識・B_概念的知識・C_手続的知識・D_メタ認知的知識)で構成された2次元マトリクス図「タキソノミー・テーブル」が紹介されました。
教師が各授業の学習目標、学習者主体の学習活動、学習評価の関係を検討し、単元ベースの学習過程を設計するためのフレームワークとして活用する「学びの設計図」と言えるものです。
筆者は「タキソノミー・テーブル」に、デジタルを活用した「学習者の動詞」や授業で活用する「道具や手立て(ICTを含む)」を明示できるように改変し、さらに現行の学習指導要領で求められる3観点による学習評価の「規準・方法・機会」を記述する欄を加えた「デジタル・タキソノミー・テーブル」を作成し、ICTを用いた授業改善のための教員研修や研究指定を受けた学校での「共通フレーム」として活用しています。

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「デジタル・タキソノミー・テーブル」 改訂版タキソノミー(※3)を元に筆者が改変

「4つの知識次元」の違いを意識した学習過程をデザインする 

次に、「デジタル・タキソノミー・テーブル」の縦軸に配置されている「4つの知識次元」について紹介します。

「A 事実的知識」
用語、特的の項目や要素。記号的な記憶として扱うことが多く、想起できるか否か、という暗記的な評価の対象にとどまりやすい。多様な活用の機会を通して定着を図りたい知識。

「B 概念的知識」
分類やカテゴリー、原則や一般化のための法則、理論、モデル、構造など。事象や現象などを理解するための知識。点と点が線になる様に、知識を相互に関連づけて深く理解しようとするための知識(群)。

「C 手続的知識」
知識(技能や道具を含む)の使い方に関する知識。体験を通して会得できる方法知や方略、教科の特質に応じた見方・考え方に該当する知識。

「D メタ認知的知識」
知識を得てきた過程、知識が変容するための認知活動、などを客観的・批判的に省察し、自身の学び方を知り、学び方を改善するための知識。

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「4つの知識次元」 改訂版タキソノミー(※3)を元に筆者が改変

これまでの授業では「知識」を「覚える(1_記憶する)」ということに重きを置いた学習活動や学習評価が多かったのではないでしょうか。
その場合の「知識」がどのようなものかを考えると、おそらくは「事実的知識」に該当し、これらを数多く「記憶する」ことが「成績が良い・優秀である」という捉え方として定着していたように思います。
現行の学習指導要領では、こうした学力観や授業観が再構成され「概念的知識」や「手続的知識」を「応用」したり、「分析」的な視点から活用したり、「評価」的な部分へ適用したりする、多様で重層的な知識の習得や活用が求められています。
また、それらを基に「メタ認知」を深め、自身の学び方を認識し、改善できることも重要になっています。
「4つの知識次元」の違いを意識しながら、各授業の中心となる学習活動を「6つの認知過程次元」に照らして整理していくことで、現行の「知識」を「覚える」から脱却した発展的な学習過程をデザインすることができるでしょう。

「探究的な学習・PBL(Project/Problem-solving based learning)」をデザインする

筆者は2016年より「デジタル・タキソノミー」を用いた単元ベースの学習過程を設計するための教員研修を行なっています。
その中でこれまでに作成された「デジタル・タキソノミー・テーブル」は軽く100を超え、いくつかの特徴から類型化を行いました。

「ベーシック型」
低次から高次へ、単元初期に出会った知識・技能など活用しながら、それらの深い理解や習得を目指す流れ。

「サークル型」
応用・分析などから入り、記憶・理解する対象への興味を高め、再度、応用・分析にトライし、それらの質を向上する流れ。応用・分析結果を比較することで自己評価(メタ認知)を促しやすい。

「プロジェクト・問題解決型」
「創造的な問い」(未経験だがワクワクする)による、高次の課題を提示。その解決を目指すための知識・技能の習得や、応用・分析を試みる流れ。試行錯誤を含み、活動も多様化しやすい。

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「単元の進行方向、学習過程の特徴による類型化」筆者作

「デジタル・タキソノミー・テーブル」を用いて単元レベルの学習過程をデザインする

初期の段階では、教科書にある事実的知識を提供し、それらを活用しながら理解を深めて応用に向かうような「ベーシック型」の進行が描かれやすい傾向があります。
学習過程を構想する際に、児童生徒主体の学習活動を中心に据えて、学習者の視点から「どのように学ぶのか」を検討していくことで、「サークル型」の展開が増えていきます。
特に、実験・実技・実演などが含まれる単元では、それらを2回以上組み込むことで、知識・技能の応用や、見方・考え方の向上を促進し、結果などの比較や自己評価などを通して「メタ認知的知識」を育む流れを設計することも可能となります。
社会問題の解決策を検討するような大きな課題を設定できる単元では「プロジェクト・問題解決型」の流れが効果的です。
社会的にも解決が期待される大きな問いについて創造的な視点から解決してみよう!というスタートを切り、基礎的な内容の学習活動からステップアップしながら、児童生徒が解決策を磨き、改善し、発信する活動を促し、サポートする。
ダイナミックでオーセンティックな学びを提供するとともに、教師自身の授業デザインや学習者への関わり方の幅を広げ、形成的評価を含む学習評価の工夫と指導の改善にも効果をもたらす学習過程をデザインすることができるでしょう。
 
「デジタル・タキソノミー」を用いて単元ベースの学習過程をデザインする方法について、ご理解いただけたでしょうか。
このコラム記事に掲載している画像と「デジタル・タキソノミー・テーブル」のサンプルや「学習動詞とICT活用の考え方」を含む、より詳しい資料も用意しています。
ご希望の方はこちらよりダウンロードしてご活用ください

GIGAスクール構想で整備された1人1台の学習者用端末は、まもなく更新の時期を迎えます。その際に必ず「どれくらい活用されているのか?」「どのような効果があったのか?」を問われることになるでしょう。「探究的な学習・PBL」を円滑に行うには、GIGA環境の活用は必須です。
そうした学習活動が学年、学校に広がっていけば、毎日活用しているか?と意識することもなくなるはずです。「効果」について「〇〇の認知次元に効果がある」「〇〇の知識の習得に効果がある」というような具体的な狙いと学習者の者の姿から説明することもできるでしょう。
無作為に使うだけでは効果も実感できず活用は促進されません。より良い学びをデザインし、その価値を教員と児童生徒が共有できるようになることが大切です。
「この単元は、デジタル・タキソノミーの『4_分析する』という高次の段階で、『手続~メタ認知的知識』の育成を目指しているんですよ」という会話が、多くの学校で聞かれることを願っています。
 

※1 「1人1台端末の利活用促進に向けた取組について」文部科学省(2022)
※2 「1人1台の学びを観察する視点 ~デジタル・タキソノミーとは?~」RICOH学びの共創室(2022)

※3「A TAXONOMY FOR LAERNING, TEACHING, AND ASSESSING A REVISION OF BLOOM’S TAXONOMY OF EDUCATIONAL OBJECTIVES. 」L.W.Anderson and D.R.Krathwohl(2001)

※本記事に掲載のその他の会社名および製品名、マークは各社の商号、商標または登録商標です。

筆者

株式会社NEL&M(ネル・アンド・エム)代表取締役/ICTスクールNEL 校長 田中 康平 氏

・教育情報化コーディネータ 1級(2018年認定 ※国内5人目)

【委員等】
国立教育政策研所「令和4年度全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた調査問題の開発・文部科学省CBTシステム(MEXCBT)への搭載およびCBT問題における合理的配慮の在り方に係る調査研究事業」(2022年度)
・CBT問題の開発及び実証に関する検討委員・CBT配慮問題の開発に関する検討委員
・経済産業省「未来の教室実証事業」教育コーチ(2018~2019年度:麹町中学校担当、2021年度:広島県教育委員会、鹿児島市教育委員会担当)
・佐賀県教育委員会 ICT利活用教育推進に関する事業改善検討委員(2015~2019年度)

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