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寄稿コラム

2023.12.22

Beyond GIGA〜教育DXへ Vol.2 教育DXのための「学習評価」のキーワード「形成的評価」

教育DXのための「学習評価」のキーワード「形成的評価」

教育ICT専門のコンサルタントとして学校や教育委員会のICT活用などをサポートする傍らで、子ども専門のICTスクールを運営されている株式会社NEL&M 田中 康平氏が作成された、形成的評価に関する資料をダウンロード頂けます。

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目次

今回のテーマは学習評価の中でも注目が集まっている「形成的評価」
前回のコラム「探究的な学習・PBLProject/Problem-solving based learning(※1)でも必要とされる学習評価の一つであり、教育DXを進めていく中で学習者の「学びの変容」を捉えたり、「新たな学びの価値」を見出していく場合にも有効な方法だと考えています。
一方で、どのように行えば良いのか分かり難い、という声も聞かれます。基本的な考え方や形成的評価を行うポイントを提案します。

「学習評価」の変化と「形成的評価」

「学習評価」と聞くと「ペーパーテストの点数による評価」を思い浮かべるかもしれません。教育関係者ではない方は特にそのイメージが強いのではないでしょうか。
これが近年変化してきました。2020年度から全面実施されている学習指導要領(※2)の総則では「学習評価」について次のように書かれています。

「児童生徒のよい点や進歩の状況などを積極的に評価し、学習したことの意義や価値を実感できるようにすること。」
「単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫して、学習の過程や成果を評価し、指導の改善や学習意欲の向上を図り、資質・能力の育成に生かすようにすること。」

この二つの内容からは、テストなどで点数化しやすい評価だけではない「多様な評価」が求められていることがわかります。
「学習評価」の変化と共に「評価の観点」「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」の3つに再構築されました。
各観点の評価の評価の方法は「図1」の通りです。(※3
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図1「学習評価における3観点の方法」
「国立教育政策研究所。学習評価の在り方ハンドブック」を元に筆者作図

評価の対象となるものが、これまで多用されてきた「ペーパーテスト」の他に、論述やレポートの作成、発表や話し合い、作品の制作など、多岐にわたっています。
こうした「点数化」が難しい学習活動の評価に関する有効な考え方として「形成的評価」が注目されています。

「形成的評価」とブルーム・タキソノミー

「形成的評価」「カリキュラム作成、教授、学習の3つの過程のあらゆる改善のために用いられる組織的な評価(※4)」とされ、ベンジャミン・ブルームらによって1970年代に提唱されました。
この時、授業の開始前に学習者の状況を把握する「診断的評価」や学習の成果を把握する「総括的評価」(図2)と併せて、どの時期にどのような評価が必要なのかを考えて実行することの重要性も説かれています。
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図2「診断的評価・形成的評価・総括的評価」筆者作図

当時「形成的評価」を日本に紹介した梶田叡一先生は、自著の中で次のように紹介しています。

「形成的評価は一定の評価手続や評価技法といったかたちの問題ではなく、指導の成果、学習の成果をどのような形でとらえ、それをどのように活用して指導や学習の有効適切化をはかるか、といったはたらきに関わるものであった。(※5)」

このコラムで度々紹介してきた「Bloom’sTaxonomy」の生みの親である、ベンジャミン・ブルームは、「形成的評価」を重視しつつ「総括的評価」と関連させることで学習者の理解等の向上を試みていたようです。
その考えは、2000年に発表された「改訂版タキソノミー(Revised Bloom’s Taxonomy)」にも受け継がれています。

「形成的評価」のポイント「学習者の動詞」

このコラムの読者の方は「改訂版タキソノミー(Revised Bloom’s Taxonomy)」「デジタル・タキソノミー(Digital Taxonomy)」として進化し、現在の教育でも有効な考えとして活用可能なことをご存知だと思います。(※6
Bloomʼs Digital Taxonomy Verbs」に書かれたICTを活用した活動における「学習者の動詞(Verbs)」は、GIGAスクール環境を活用した授業における「形成的評価」のポイントとして大きな手がかりを与えてくれます。
(今回のダウンロード資料で「学習者の動詞」の詳細版をご覧いただけます。※ダウンロードはこちら

私が関わっている学校の実践研究では、デジタル・タキソノミー・テーブルを使い単元をデザインする際に、授業で見られるであろう学習者の動詞を手がかりに認知過程次元を捉えたり、評価規準や評価の方法・機会を検討したりしています。
授業実践の中でも児童生徒を観察する視点として機能し、学習や指導の改善を試みるための重要な情報を与えてくれるトリガーとなっています。

「形成的評価」を通して「ICTの効果的な活用」を考える

現在の学習指導要領における「学習評価」の方法に示された「文章による説明、観察・実験、式やグラフによる表現、発表、話し合い」などの学習活動で、どのような学びが生まれ、どのような変容があり、どのような成果に向かっていっているのか。
これらを見取り、学習や指導の改善を促す「形成的評価」の手がかりとして「デジタル・タキソノミー」の「学習者の動詞」を活用できれば、自ずと「ICTの効果的な活用」のポイントも浮かび上がってきます。
さらに「GIGA端末を活用したレポート作成、プレゼンテーション、動画による表現、プログラミング」などICTを活用した学習活動における「形成的評価」にも対応できるでしょうし、ICTの効果的な活用を伴う学習や指導の改善にも繋がっていくはずです。
その先には、NEXT GIGAがあり、それぞれのBeyond GIGA~教育DXへの道が見えてくるかもしれません。

1 「デジタル・タキソノミーによる『探究的な学習・PBL』のデザイン方法」学びの共創室(2023
2 「学習指導要領『生きる力』」文部科学省(2019
3「学習評価の在り方ハンドブック」国立教育政策研究所(2019
4「教育評価重要語辞典」西岡加名恵・石井英真(2021
5「形成的な評価のために」梶田叡一(1986
611台の学びを観察する視点 ~デジタル・タキソノミーとは?~」 学びの共創室(2023

※本資料に掲載の会社名および製品名、ロゴマークは各社の商号、商標または登録商標です。
※また、画像・イラスト等のコンテンツの著作権は各社に帰属しております。

筆者

株式会社NEL&M(ネル・アンド・エム)代表取締役/ICTスクールNEL 校長 田中 康平 氏

教育情報化コーディネータ 1級(2018年認定 ※国内5人目)

【委員等】
国立教育政策研所「令和4年度全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた調査問題の開発・文部科学省CBTシステム(MEXCBT)への搭載およびCBT問題における合理的配慮の在り方に係る調査研究事業」(2022年度)
CBT問題の開発及び実証に関する検討委員・CBT配慮問題の開発に関する検討委員
経済産業省「未来の教室実証事業」教育コーチ(2018~2019年度:麹町中学校担当、2021年度:広島県教育委員会、鹿児島市教育委員会担当)
佐賀県教育委員会 ICT利活用教育推進に関する事業改善検討委員(2015~2019年度)

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